オルトレキシア 気づいた時にはヒドい状態に
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オルトレキシアという言葉を最近耳にするようになった。
オルトレキシアというのは、健全な食べ物にこだわって、かえって身体を壊す障害だ。
正式名称は、オルトレキシア・ナーボウサ(Orthorexia nervosa)と言い、直訳すると「神経性の正しい食事」になる。
神経性の正しい食事って、一体どういうことかというと、根拠なく信じている正しい食事と言うことらしい。
たとえば動物の肉は、動物を殺さねばならないので、食べない。
エビやカニはアレルギーが出るので、食べない。
普通の牛乳より、ローファットミルクの方が脂肪が少ないので良い。
卵やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品も生臭いので、食べない。
精白された米や小麦は、栄養がないので避ける。
食品添加物も薬剤だから、食品添加物が入った加工食品は食べない。
そうやってドンドン食べ物の選択肢を狭めていくのが、オルトレキシアの症状だ。
ただしこれは栄養学的に正しい食事ではなく、観念的なものである。
そのためこういう食事を進めていくと、健康に最低限必要な栄養素が摂れなくなる。
ただしこういう栄養不足・低栄養になっていても、すぐには気づかない。
というのも、たとえばミネラルが不足しても、すぐには身体に悪影響は出てこないからだ。
ミネラルは骨に蓄えられて、不足すれば骨からまた供給する仕組みになっているので、短期間のミネラル不足は問題ない。
ところが長期間ミネラル不足になると、骨に蓄えられていたミネラルを使い果たしてしまい、気づいた時にはもう深刻なミネラル欠乏症になっていたりする。
そうして気づいてみたら、抜け毛が多くなったり、皮膚や爪がボロボロになったり、骨がスカスカになったりと、様々な事が起こる。
ところがそういう状態になればなるほど、「もっと正しい食事をしなきゃ」という強迫観念が強まるのが、オルトレキシアの深刻なところなのだという。
残念ながら、人間の身体というのは、こういった「正しい食事」では、栄養不足になる。
たとえばタンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせでできているが、肉や卵や魚を食べないと、バランス良くアミノ酸をとることができない。
また油や脂肪も、十数種類の脂肪酸(油)の混合物で、こちらも様々な種類がある。
大きく分けると、飽和脂肪、単価不飽和脂肪、オメガ9系統、オメガ6系統、オメガ3系統の5種類に分かれるが、それぞれに役割があるので、バランス良く摂るのはかなり難しい。
植物油が健康に良いという時代もあったが、過熱すると傷んだり、トランス脂肪酸ができたりするので、こちらもそう簡単に一種類の油で済ますことはできない。
バランスよく食べるためには、結局、色んなモノを食べざるを得ないので、オルトレキシアは偏食にならざるを得ない。
変な話、一番「正しい食事」を知っているのは、ボディービルダーで、彼らが普段食べているのが最低限人間に必要な食品と言うことになるかも知れない。