食べ物や環境が健康に関係する理由
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食べ物と病気には、関連性がある。
これは統計学的な処理をすると、相関係数(相関関係を示す数値)が高くなる組み合わせが、いくつも見つかることから、ハッキリしている。
しかしなぜ、食べ物と病気に関連性が生まれるのか、医学的にはよく分からなかった。
というのも病気になりやすさは、親から受け継いだ性質(遺伝子)によって決まるものだと考えられ、病気と遺伝子の関係にばかり注目が集まっていたからだ。
その結果、糖尿病になりやすい遺伝子、高血圧になりやすい遺伝子、感染症にかかりやすい遺伝子、などなど、病気と遺伝子の関係が色々明らかになってきた。
ガンも、遺伝子のDNAが傷つくことで起こると考えられ、ガンと遺伝子の関係も色々研究が進んでいる。
ところが病気と遺伝子の研究が進むにつれて、遺伝子だけでは説明できないことが、たくさんあることが分かってきた。
たとえば、ある病気になりやすい遺伝子を持っていても、その病気を発病する人と発病しない人がいるのだ。
そこで近年、エピジェネティクス(epigenetics)という分野の研究が進み、食べ物に含まれる特定の成分が遺伝子に働きかけ、病気を発病させたり、逆に抑制したりすることが分かってきた。
遺伝子には様々な情報が詰まっていて、遺伝子情報に従って様々な物質を生み出すことができるのだが、それを作り始めるスイッチがあって、スイッチをONにするかOFFにするかは、食べ物や環境によるということらしい。
エピジェネティクスとは
エピジェネティクス(epigenetics)とは、外因によって遺伝子が活性化したり沈静化したりする現象を研究する分野だ。
たとえば、緑茶はガンを抑えると言われている。
これは緑茶の消費量とガン患者の相関関係を調べると、緑茶の消費量が多い地域でガンの発生率が小さいので、統計学的にはハッキリしている。
ところが緑茶の成分には、ガン細胞を壊すような成分など含まれていない。
抗がん剤のように、ガン細胞に直接効くような成分は、緑茶にはないのだ。
じゃあ統計が間違っているのか?
そして様々な実験が行われ、緑茶に含まれる「没食子酸(もっしょくしさん)エピガロカテキン」(EGCG:エピガロカテキンガレート)と言う成分が、白血球のマクロファージを活性化させたり、ガン細胞発生を抑えたりするらしいことが分かった。
ただEGCGの働きはそれだけではなく、DNAの遺伝子活性を左右する働きを持っているらしい。
ガン関連の遺伝子には、ガンの遺伝子の他に、ガンを抑制する遺伝子や、DNAのエラーを修復する遺伝子があって、どうやらガンを抑制する遺伝子のスイッチを入れるらしい。
逆にタバコの煙に含まれる発がん性物質は、ガンを抑制する遺伝子を不活性化し、肺ガンが起こりやすい状態をつくる、と言うことらしい。
こういう風に、特定の遺伝子を活性化させたり、不活性化させることによって、病気が起こったり、病気が抑えられたりするわけだ。
そのため、遺伝子を調べて、かかりやすい病気を見つけた上で、その遺伝子を眠らせるような食事や生活をすることで、病気の発病が抑えられると考えられている。
これがエピジェネティクス的な治療法って事だ。