健康によい成分を作って飲む
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人間の大腸に住んでいる細菌は、100種類以上で100兆個もある。
重量にするとなんと1.5キロもあって、これらが毎日様々な物質を生産して、人間の健康状態を左右する。
なので腸内にいる「善玉菌」が、腸内で生産している健康に良い成分を外部で作って飲めば健康によいはず。
これが「バイオ・ジェニックス(Biogenics)」の考え方だ。
バイオジェニックスは「生物により生成された」という意味だが、これなら腸内細菌叢の状態が悪くても、身体に直接働きかける事ができる。
なんだ、それなら最初っからそうすりゃ良かったのにとは思うが、ヨーグルトの健康効果を言い出したイリア・メチニコフが、食べたヨーグルトの中にいる乳酸菌・ビフィズス菌がそのまま腸内に住みつくと主張していたために、みんなその方向で研究を進めていたのだ。
このメチニコフは、細菌研究で有名なパリのパスツール研究所で白血球の働きを見つけた100年前のノーベル賞学者。
そして20世紀初めにブルガリアの長寿村を尋ねて、長寿の秘訣はヨーグルトだと言ってヨーロッパ中にヨーグルトを広めた人。
そんな偉い先生が言ってたことだから、みんな信じて腸内に乳酸菌を送り込む研究に力を入れすぎてしまったらしい。
ところが腸内に乳酸菌を生きたまま入れても、細菌叢のパワーバランスに跳ね返されてなかなか住みつけないということがわかって、乳酸菌が生産する物質に興味が移ってきたわけだ。
長寿の秘訣は乳酸菌生産物質
ロシア人ノーベル賞学者メチニコフは、ブルガリアの長寿村を訪れて、ヨーグルトが長寿の秘訣だと考えた。
そしてヨーグルトを食べると、乳酸菌(ビフィズス菌)が腸に住みつき、腸内の腐敗菌が出す有害物質を抑え、老化を遅らせることができると主張した。
そこで20世紀後半は、健康食としてヨーグルトが広まり、食品業界や医薬品業界では、競って腸内細菌叢の研究が進められた。
その結果、ヨーグルトや乳酸菌飲料が身体に良いのは、腸内に乳酸菌・ビフィズス菌を送り込むからではなくて、死菌体(死んだ乳酸菌や酵母)が免疫力を上げ、ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれる様々な成分が健康や腸内環境を整えているのだとわかってきた。
となると、生きた乳酸菌を腸に送り込むより、乳酸菌が作る健康成分を作って飲む方が手っ取り早い。
腸内細菌叢を整えるには時間がかかるし、食事も変える必要があるから、上手くいくとも限らないからね。
そこで今度は健康な人の腸内環境を再現して、健康によい成分を乳酸菌やビフィズス菌に作らせて、それを飲むという「バイオ・ジェニックス」の研究が始まった。
たとえばバイオジェニックスの一つである「乳酸菌生産物質」では、有機大豆の豆乳や黒糖を培養液に用いて、15~6種類の乳酸菌や酵母を混ぜて育てる。
混ぜて育てるので「共棲培養(きょうせいばいよう)」と呼ぶが、共棲培養によって様々な健康成分がバランス良く作られる。
これを食べたり飲んだりすると身体に良いというわけで、要するに、乳酸菌の良いトコ取りって事だね。
ただし乳酸菌生産物質(乳酸菌発酵物質)の共棲培養では、培養タンクの中で菌同志のバランスが安定するまで時間がかかり、食品としては、ちょっと割高になってしまうのが難点だが。